第10章 有栖と黒のQ
有栖を馬に乗せ、兵舎へと向かっている道中、彼女の身体が強ばっていることに気が付く。
(…まだ怖がられているのか
何も会話がないと緊張もするだろうからな)
そう思い、先程の有栖の言葉を耳にして気になったことを聞いてみることにした。
『…馬に乗れるのか?』
「…っ…、はい、小さい頃から習っていたんです」
あまり聞かれたくなかったのかもしれない。俺の質問に少し戸惑った様子を見せた後、有栖はそう答えた。
『盗み聞きするような真似をしてすまない、少し聞こえた言葉が気になったんでな…
……で、カリーナは何て?』
「いえ…気にしないでください
えっと…カリーナ…、ああ、彼女の名前なんですね
軍の許可が下りれば是非、と」
『ふっ…、そうか、それなら心配ない
今の状況が落ち着いたら行ってくるといい』
「本当ですかっ!ありがとうございます!」
少し身体を捻って振り向いた彼女の笑顔につられるように、俺も口元を緩ませ、にこりと微笑んだ。
『……良い能力だな』
「………え?」
思ったことを素直に言葉にすると、有栖は目を見開いて固まった後、バッと捻っていた身体を戻し、俯いてしまった。
(言っちゃいけないことだったか……?)
「……と……めて……れました」
ボソッと呟いた有栖の言葉は、馬の足音にかき消されて上手く聞き取れず、もう一度聞き返してみたが、有栖は、ありがとうございますって言ったんです、と言い、口を閉ざしてしまった。
耳が微かに赤くなっていたから、嫌なわけではなかったのだと…思う。