第10章 有栖と黒のQ
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「…………だけは……と思って…
黒のぐ……で………くね」
ハールに、何か不穏な空気があれば知らせてくれるように頼み、外に出ると、馬の頬を撫でながら、楽しそうに馬に話しかけるエル…有栖の姿があった。
(動物の心も読めるらしいということだったが…本当みたいだな
…彼女はあんな顔もするのか)
エルになりきろうとしていた昨日の様子や、さっきの様子を見ていて、やはり彼女はエルではないことを感じていた。
エルは、無邪気な笑顔で、周りを巻き込んで明るくする、夏のような明るい空気を持っている。
対して、彼女…有栖は静かに、綺麗に笑う。貼り付けられたようにも感じそうな彼女の笑顔だが、決して冷たい感じはせず、言うなれば、春のように包み込むような柔らかい空気を持っているのだ。
そんな彼女が、本当に楽しそうに目元を和らげて言葉を紡ぐ様子は、とても儚く、そして美しくて、俺は思わず息を飲み込んだ。
(…っと、俺はお嬢ちゃん相手に一体何を考えているんだか)
俺は有栖を驚かせないように近付いた。
「………君さえ…ば…度、散歩しない?
僕は昔から乗馬をしていたんだ」
どうやらこの馬…カリーナと息統合したようで、彼女はそんな提案をしていた。カリーナの様子は嬉しそうだったので、きっと、承諾しているのだろう。
話しかけようとした瞬間、有栖は俺の存在に気付き、ビクッとして身体を強ばらせた。
(…怖がらせちまったみたいだな)
安心させるように、できるだけ優しい声色で話しかける。
『待たせたな、帰ろう』
「…はい」
ぎこちない笑顔ではあったが、まだ少し赤さの残る目元が柔んだのを見て、俺も少し安心し、そっと息をついた。