第10章 有栖と黒のQ
動物は、この能力に驚くことがほとんどない。人間よりもそう言った出来事に対する耐性がかなりあるようで、僕は小さい頃から動物と話すことだけは好きだった。
能力を第二段階まで解放するのは動物相手だと難しいこともあり、基本的にいつも僕は声を出して話している。
《まあ!お上手なのね!
安心して、私は黒の軍で一番の馬なのよ》
凄いでしょ、と言いたげに、彼女は鼻を鳴らした。
『あっはは!それは頼もしいな
そうだ、君さえ良ければ、今度 散歩しない?
僕は昔から乗馬をしていたんだよ』
《あら、素敵!デートのお誘いね!
軍からの許可が下りたら、是非 しましょ♪》
嬉しそうに嘶いた彼女の様子を見て、僕も微笑む。
(やっぱり、癒されるなあ…
こんなことなら、動物と関わる仕事に就けば良かった)
その思った時、後ろからザリっと土を踏む音がした。
反射的に身体を固くしてしまった僕の様子に気が付いたのか、それを解すような優しい声が聞こえた。
「…待たせたな、帰ろう」
『はい』
そうして、僕はシリウスさんの腕の中に抱きかかえられるような格好で馬に乗った。
(さっきの会話、聞かれてしまっただろうか…
能力のことは知られているとはいえ、やはり、聞かれていたとすると、あまり気持ちの良いものではないな…。
……というよりも!この体勢は…!!!
仕方がないのは分かっているんだが、分かっているつもりだが…。兵舎まで心臓が持つだろうか…)
背中に感じるシリウスさんの体温や微かに聴こえる息、そして何より、鼻を微かにくすぐる石けんの香りに、僕の頭は沸騰寸前で、先程とは違う意味で身体を固くするのだった。