第9章 黒のQと仲間達
"彼女は能力持ちの人間だ"
"心を読めるらしい"
仕事柄、多くの人々と触れ合う為か、能力持ちの人間には今までに 数人会ったことがある。しかし、どの能力も物理的なもので、精神的な能力を持つ人間には今まで会ったことがなかった。
心を読める能力か、
そう呟いた時、俺はふと ある場面を思い出した。今朝の出来事である。
彼女はフェンリルの顔に手を触れた直後、明らかに動揺していた。あれは、思いがけずにフェンリルの心を読んでしまったことに対する反応だったのだろうが、それにしても過剰な反応だったようにも思う。
それに、彼女が俺達の名前を知っていたことにも疑問が残る。
そんなことを考えているうちに、兵舎に着いた。
門兵に挨拶をし、1日付き合ってくれた馬を撫でて小屋に戻し、餌を与える。
馬の世話を終え、まだ明かりのついている談話室を覗くと、そこには、レイ以外のメンバーが揃っていた。
「エルは!?」
俺の姿を認めた瞬間にそう言ったのはフェンリルだ。
『ちゃんと見つかった。たまたま俺の知り合いに拾われたらしくてな、今日はとりあえず預かってもらってる。明日の昼頃に迎えに行く予定だ。』
「良かったぁ〜!」
「…うん、良かった。」
俺の言葉を聞くと、その場の空気がふっと緩むのが分かった。
…それだけ、エルは黒の軍にとってかけがえのない存在になっている。その事実に、ふっと頬が緩む。
『明日、朝食を食べた後、0800から緊急会議を開く。幹部は執務室に集まる様に。』
そう告げた後、自室に戻って事務的な仕事をさっさと片付け、眠りについた。