第4章 笹色(ささいろ)
幸村は私の背に手を置いたまま、申し訳なさそうにうな垂れる。
(明日出立なのに……こんな事で煩わせるなんて)
一瞬でも心配かけた事がやりきれず、私はしゃがんだ着物の裾が割れないよう、片手で抑えると、つま先ににきゅっと力を入れ振り返った。
「幸村……心配しすぎ」
「……あのよ、ろき。
腹の子は俺とお前のだろ。
二人で乗り越えればいいんじゃねえのか?
お前を心配するのは当たり前なんだよ……
俺をもっと頼れ。
苦しいのを我慢して、大丈夫とか………言うんじゃねえ。
………俺にだって出来ることあんだろうが」
「………うん」
幸村の気持ちが…やさしさが……心に染みる。
私はあなたに何を返せるだろう。
これからの幸せな未来の為に、私は何をすればいいんだろう。
私に……
何が出来るんだろう……。
考えれば考える程、わからなくなる。
嫌な考えを払拭するのに、ふるふる頭を揺らす傍らで
「ちょっと待ってろ」
幸村はそう言うと湖の周りに群生する笹を手際よく刈り落とし、平たんな場所に敷き詰めると自身の上着をはらり……その上に広げた。