第4章 笹色(ささいろ)
「あの……さ………。」
「ん?」
「あの……」
「あ?」
幸村はようやく起こした火種の、立ち上るくすぶる煙に息を吹き込みながら、耳だけをこちらに傾けている。
「うん……その……ミミズかなって………」
「あ?」
「エサは……ミミズかなって……」
「あ゛???」
しつこいまでに【ミミズ】を連呼するその言葉に、ようやく顔を上げると吸いつけられたように幸村のいぶかしげな視線がしゃがみ込む私の視線にピタッと止まった。
「なんだ?」
「いや……だか、ら……魚釣る時のエサって、ミミズ???」
「今日はミミズ使わねーけど……どした?」
ミミズが除外されてる事に心なしかホッとしたのも束の間。
腰に下げた巾着にゴソゴソ手を入れたかと思えば、嬉しそうに弾むような声で、私の目前にその手を差し出した。
「今日使うのはコレだ!」
幸村の手のひらに乗せられた数個のそれは、タンポポの綿毛のような形をしているが、何か……違う。
(え?なにこれ……色が……毒々しい)
正体のわからない【何か】を確認する為、差し出された手にゆっくりと近づく。