第3章 紺鼠(こんねず)
「結び雁金(むすびかいがね)にござりまする。
家紋にはそれぞれ意味がありましてな。幸村様の甲冑にある六文銭。
あれは三途の川を渡る船賃が六文。すなわち【いつも死ぬ覚悟ができている、死を恐れず決死の覚悟で戦う】という意味。
もうひとつの結び雁金はその名の通り、雁が描かれておるのでございますが、
古(いにしえ)より雁は【縁起の良い幸せを運ぶ鳥】だと伝えられておりまする」
「それなら絶対【結び雁金】にします!
いつも幸村に幸せが訪れるように、願いを込めて刺繍します!」
勢い込む私の言葉に、道三様はくすっと笑う。
「ろき様なら、そうおっしゃるとおもうておりました」
「それともうひとつ……ご相談があるのですが」
「はい? わたくしに出来うることなれば、なんなりと」
太陽が再び顔を出したように、道三様はにっこり微笑んだ。