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イケメン戦国 〜いにしへよりの物語〜

第3章 紺鼠(こんねず)


「遅い!」


「あ、幸村にろきさん」




広間へ入った私達の姿を見るや否や、謙信様は相変わらず不機嫌そうに一喝し、隣で珍しくお酌をしていた佐助君は謙信様の声に反応して顔を上げると私達に気づき名を呼んだ。


たった二日会えなかっただけなのに、二人の顔を見た途端安心感で胸が一杯になるのと同時に、昼間「何か問題が起きているようだね」と言った信玄様の言葉を思い出し、ここは平和である事が難しい乱世なのだと思い知らされる。


私にとって当たり前の光景が、今日はやけに尊く感じられて鼻の奥がツンとした。




それまでの心配を吹っ切るかのように、上座の前まで急いで行くと正座した私はありったけの笑顔で声を掛ける。



「お帰りなさい。謙信様! 佐助君!」


「ん? ろき、如何したのだ?」


「え? 何がです?」


「やけに嬉しそうではないか。

どこぞで美味いものでも見つけたのか?」


「はい?」


「そのように嬉しそうな顔をするのは食うておる時ではないか」


「……っ違います!」


「違うのか?」


「ち、が、い、ま、す!」


「『ぶっ』」



二人の帰りを喜ぶ気持ちを伝えたかったのに、謙信様に食べ物のせいで喜んでるのだと勘違いされた私は大声で否定する。

そんな私を謙信様の隣で片手に徳利を持ったまま顔を背けて肩を揺らす佐助君と、あからさまに吹き出す幸村が視界に入った。
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