第2章 照柿(てりがき)
どう考えても一緒にお風呂なんて恥ずかしすぎる……。
困り果て突っ立ったままの私の横で、何食わぬ顔でさっさと着物を脱いだ幸村は手拭いを肩にかけると腕を組み私に背を向けた。
全く動く気配のない鍛え上げられた幸村の背中に戸惑いながら問いかける。
「……何してんの?」
「お前を待ってんだろ〜が。
後ろ向いてっから早く脱げ」
「で、でも……」
「こっちは素っ裸でさみーんだよ。早くしろって」
せっつくような言葉に、流石に風邪をひかせるわけにはいかないと諦めた私は、素早く着物を脱ぎ、目の前の棚に用意されている湯帷子を手に取ると急いで羽織った。
風呂場に入り、私を木椅子に座らせると、幸村は湯桶に湯を汲みおもむろにぬか袋を浸した。
その姿を盗み見ながらこれから起こるであろう事を思うと恥ずかしさでいっぱいになる。
ーーこの状況。
自分で体洗うって言っても絶対聞いてくれなさそう……
あ~~っっっっ! もうッッ! どうしよう……
そんなことを考えながら思い悩んでいると、案の定…身も蓋もない言葉が投げられた。
「んなもん着てたら洗えねえだろ。脱げ」
「やだよっっ……恥ずかしすぎるッッ……」
「バカかお前は。
俺と子まで作っといて何が恥ずかしいんだよ」
「それとこれとは別!
幸村デリカシーなさすぎッ」
「でりかし? まぁたわけわかんねー事言いだしやがって。
なにがどう別なんだ。
あーもう! んじゃ腰まででいいから!
とにかく脱げ。背中流せねえだろ」