第2章 照柿(てりがき)
ーー確かに……何かあれば連絡来る。
気を取り直した私は、膳に置かれた残りの料理を余す事なく平らげた。
「ごちそうさまでした」
手を合わせる私を待っていたかのように、幸村はお茶を飲む手を止めると、目線だけをこちらに向ける。
「もういいのか?」
「うん。お腹いっぱい」
「そうか……んじゃ、湯浴み行くぞ」
「……なに?」
「湯浴みだ湯浴み」
「ちょっ……湯浴みって………」
私の問いに答えながらその場に立ち上がると、箪笥を開け、何やらもぞもぞ手を動かしてるかと思えば、自分と私の着替えを抱え戻ってきた。
抱えた2人分の着物から目が離せず、たった今浮かんだ疑問を打ち消そうと、おずおず窺うように聞いてみる。
「えと……湯浴みに行くって言うのは……もちろん別々に入るんだよね?」
「あ? 一緒に入るに決まってんだろ」
「いやいやいやいや……なんで? 幸村何言ってんの?」
「お前こそ今さら何言ってんだ。
1人で入ってすっ転んだらどうすんだよ」
「そんなドジしないってばっ」
「いーや。お前ならあり得る。
昼間だって鼻ぶつけて呻いてたの誰だよ。
ごちゃごちゃ行ってねーで行くぞ」
「ちょ、ちょっと待って!」
慌てふためく私の手首は幸村の大きな手でがっちりと掴まれ、引きずられるように脱衣所まで連れて来られた。