• テキストサイズ

イケメン戦国 〜いにしへよりの物語〜

第2章 照柿(てりがき)


幸村の余りの手際よさに口に手を当てて驚いていると、思い出したように訪ねてきた。



「そう言えば、ダイスの形に切った実はどうすんだ?」


「ふぇ?」


「なんて声出してんだよ……くくっ。

お前に言われてダイスの形に切った柿、どうすんだって聞いてんだけど……ぷ」


「あ……」



その存在をすっかり忘れてた私は、幸村の言葉で思い出す。

慌てて側にあった桶を覗くと、幸村の手によって綺麗に整えられた実が入っていた。

手を伸ばし両手で抱えると、三和土(たたき)に置かれた草履をつっかけ、戸口に立つ幸村の元へ駆け寄った。



「ろき、走るな」



たしなめるように言うと、私が持つ桶に手を伸ばし奪い取った。

今まで何度も目にした光景だが、いたわるが故の行動だと思うと嬉しくて、桶を抱える腕に自分の腕を差し込みぴったりと体をくっつけた。

私の思わぬ行動に一瞬驚いた表情を見せたが、すぐにそっぽを向き片足で器用に引き戸を開けた。

平然としていても、耳まで真っ赤にしている幸村を見ると思わず笑いが込み上がる。



「ふふ……そんなに照れなくたって」


「うるせ」


「それに両手塞がってるんだから、戸ぐらい私が開けるのに」


「うるせー」


「また転ぶかもよ?」



今朝、頭から畳に突っ込み転んだ場面が鮮明に蘇り、口を押さえてくすくす笑っていると、耳をつんざくような幸村の大きな叫び声が突然聞こえた。
/ 134ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp