第2章 照柿(てりがき)
城へ戻り、遅めの昼餉を部屋でとると、甘味作りを手伝うと言い張る幸村と一緒に厨へ向かった。
「んで、何すりゃいいんだ?」
たすきをかけながら私に問いかける幸村の足元には、採った柿がザルに山のように盛られている。
どうしようかと考えながら周りを見回すと、壁につるされた食材が目に飛び込んできた。
ーーあ! これならひとつも無駄にせずに美味しく食べれる。
思いついた私は早速幸村に伝える。
「幸村、柿羊かんで10コ使うとして、余った柿は干し柿にしよう」
「おー。で?」
「まず10こ、柿羊かん用にヘタを切って、中身くり抜いたら皮をむくの。
ここをこうやって……」
説明しながら目の前でやってみせると、幸村は興味津々といった表情で私の手元をじっと見ている。
「こんな感じ」
「おー」
短い相槌を打つと、教えられた通りにヘタを切り始めた。
指を切らないか心配で、包丁を持つ手元を見るが意外にも器用な幸村に安心した私は、寒天液を作ろうとかまどに火をつけた。
鍋に、水とこしあん、寒天を入れ煮溶かし粗熱をとる。
きれいにくり抜かれた柿を幸村から受け取ると、匙でゆっくり流し込んでいった。
「柿の器か~いいなこれ。
喉にも良いし好物のあんも入ってるし、信玄様喜ぶだろうな」
覗き込むように見ていた幸村は嬉しそうにつぶやいた。