第2章 照柿(てりがき)
「なんだよ? どした? ろき?」
「………………」
いくら照れ屋だといっても二人でいるときは顔を赤らめながらも、幸村なりのやり方で愛してくれていることは十分わかっていた。
たとえそれが不器用だと言われても、私と幸村にとっては当たり前だったし、他の何よりも幸せな形だった。
でも、今日の幸村は違う。
初めて見せる艶のあるしぐさや表情に驚き戸惑い、その姿を思い出すだけで胸が高鳴る。
「ゆ、幸村、なんか今日変じゃない?」
「あ?」
「いや……なんていうか………その……」
「なんだよ?」
歯切れの悪い言葉に、私の両頬を片手で挟むとムギュッと掴まれた。
アヒルの口にされたまま幸村を探るような目で見つめる。
「何が変なんだよ。
お前が言うまで手は放してやんねえぞ?」
背中を支えてた左腕は、いつのまにか腰に回されがっちり固定されている。
頬も掴まれ身動きも出来ない。
観念した私は口を開いた。
「今日の幸村……いつもと違うから……」
「あ?」
「しぐさ……とか?」
その言葉で察したのか、頬を掴む手を離した幸村は大きなため息をつき、腰に回した腕に力を入れ一気に抱き寄せた。