第2章 照柿(てりがき)
「あずきと柿が欲しい」
「柿は採りに行くとして……あずきは市に行けばあるな。
んで柿とあずきをどうすんだ?」
「こしあん作って、柿に流し込むの」
「おい」
「ん?」
急に目を細めてじっとりと見つめてくる幸村を不思議に思い聞き返す。
「お前なぁ、甘味作んのに手間暇かけて無理すれば体に障るかもしれねーだろ」
私の体を気遣って言ってくれてるのがわかり、なんだか嬉しくなった。
「幸村の気持ち、すごく嬉しい。でも……手間暇って程のものじゃないから、全然大丈夫!」
「いーやダメだ。
俺はお前に無茶すんなって言ったよな。
安心させろとも言った。
ろき、お前は大人しく俺に守られとけ。
こしあんいるなら、いつも行く甘味屋のオヤジに分けて貰えるよう頼む。
ほら、行くぞ」
言い聞かせるように言うと、私の手をきつく引き寄せ歩き出す。
強引な姿の裏には、決心と熱意がある事を私は知っている。
不器用だからこそ人一倍努力をする事も知っている。
「俺がぜってえ守るから心配すんな。」
あの言葉通り、幸村は絶対に守ってくれる。
私とお腹の赤ちゃんを守り抜いてくれる。
こんなに逞しくて優しい人が自分の隣にいてくれるのかと思うと、胸がいっぱいになり精一杯の気持ちを込めて言葉にした。