第2章 照柿(てりがき)
「ぷっ、な~に百面相してんだよ」
「だって……柿とあんこを使った甘味が思い浮かばなくて」
「だなぁ」
「柿か………柿とあんこ、柿にあんこ……あんこを柿に……」
「大丈夫か? お前……くくっ」
独り言をつぶやく私が可笑しいのか、幸村は隣で肩を揺らして笑っている。
「もう! 真剣に考えてるのに!」
「ッぷ……わりぃわりぃ。
……あーそうだ。
あんこで思い出したけどよ、信玄様の好物はあんこだろ?
謙信様の好物は梅干しじゃねーか。
さっき気付けにって食わされたけど、あんな酸っぱいもん良く食えるよな。
種まで飴みてえに舐めんだから、よっぽど好きなんだろうな」
「ふふ。
実と種と二回も楽しめるんだね………あ」
自分の言葉にハッとする。
毎年、季節になると庭で採れた甘夏でおばあちゃんがゼリーを作ってくれた。
中身を少しくり抜いたら果肉を搾ってゼリー液を作り、甘夏の皮の器に流し込んで冷やす。
櫛形に切ると綺麗な二層になっていて、最初にゼリー、そのあとに果実と二回味を楽しめた。
ーーゼリーの部分を羊かんにすれば、柿もあんこも一緒に食べられるし……二回楽しめる!
「幸村!」
急な大声に幸村は肩をビクッと跳ね上げて私を見た。
「っなんだよ! びっくりさせんなよ!」
「思いついた!」
「あ?」
「だから明日持ってく甘味!それでね材料を揃えたいの」
息を弾ませ畳み掛けるように話す私の姿に、幸村は驚いた表情で尋ねる。
「なにがいるんだ?」