• テキストサイズ

イケメン戦国 〜いにしへよりの物語〜

第2章 照柿(てりがき)


中を見た瞬間……がくり、肩を落とし信玄様は大きなため息をつく。


「はあ~……あいつは本当にわかってない」

「どうしたんです?」

「見てごらん……」

「『(!!!)』」


出された器をのぞくと、ギッシリ詰まった梅干し。


「昨日も今日も甘味を食べてないんだ。道三が持ってくるのは苦い煎じ薬と薬膳だし、このまま甘味処に駆け込みたいよ」


思いのたけを晴らすように信玄様は恨めしく呟いた。


「そんなことだろうと思って、ちゃんと持ってきましたから。

時間がなくて簡単なものしか作れず申し訳ないですが、召しあがってみてください。

道三様に器をお借りしてきます。

ちょっとお待ちくださいね」


急いで立ち上がり板張りの廊下を進むと、土間の横で囲炉裏に向かい薬草をすり潰す道三様がいた。


「甘味という程のものではないのですが作って参りました。道三様もご一緒にいかがですか?」


「おお、ろき様の手作りとあらば是非とも。

どのようなものか楽しみにございますなあ。

薬も今出来たところでございます。

さっそく茶を入れましょう」


「ふふ。ありがとうございます。器と匙をお借りしても?」


「もちろんにございますとも」




人数分の器と匙を借り、道三様が淹れてくれたお茶をお盆にのせると、信玄様の待つ部屋へと運ぶ。



「おまたせしました。信玄様」


「待ちくたびれたよ姫~~」


子供のようにせっつく信玄様の姿が可笑しくて、ぷっと吹き出すと、私の横で器に盛った焼き柿とお茶を配る道三様も又、口に手を当て肩を震わせていた。
/ 134ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp