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イケメン戦国 〜いにしへよりの物語〜

第2章 照柿(てりがき)


賑やかな城下を抜けると、辺り一面黄金色したススキがそよそよと気持ちよさそうに風に吹かれて揺れている。

野原の奥に目をやれば、秋色に染められた木々に囲まれるように道三様の庵がひっそりとたっていた。


庭先で落ち葉を掃く道三様の姿を捉えると、急いで近寄り私達は思い思いに挨拶をした。


「こんにちは! 道三様! ご無沙汰して申し訳ありません」


「道三。信玄様はどんな具合だ?」


「どうも。お久しぶりです」


「おやおや、これはこれは……三人お揃いで。

時にろき様。そろそろお会いしたくお城へ参ろうと思うておりました。

して、変わりはございませぬか?」


「はい。みなさんには本当に良くして頂いて。楽しい日々を送っております」


「さようにございますか。それは良かった。

ささ、こちらへ。

先ほどより暇を持て余しておられるようで」



促すように前を歩き信玄様の部屋まで私達を案内すると、襖越しに声を掛け、腰を落としそっと引手を引いた。



「信玄様、幸村様たちがお見えです」



道三様の背中から窺うように部屋をのぞくと、褥から体を起こし肩に羽織を掛けた信玄様がいた。

私達の姿を捉えるとパッと明かりを灯した様な表情になる。


「茶をお持ちいたしますね」


道三様がにっこり微笑み座礼して部屋を後にすると、信玄様はつまらなそうに呟いた。


「退屈でたまらなくて、どうしようかと思ってたんだよ」


「退屈って……信玄様、調子はどうなんだよ?」


「この通り元気さ。そろそろ城に戻りたいんだが」


「はあ? 発作起こしたばっかで帰れる訳ねえだろ」


「信玄様、ちゃんと養生してください。
謙信様だって心配してるんですから。
その証拠に、これを……」



謙信様から預かった小さな包を信玄様の前に差し出す。



「謙信様からです。今朝、信玄様にと言付かりました」


「へえ、あいつがねえ。珍しいこともあるもんだなあ」



面白いものでも見つけたような好奇心いっぱいの目で、包を開いていく。
入っていた器を手に取り、右手で蓋を摘まむと、そ~っと中を覗き込んだ。
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