第6章 白(しろ)と至極色(しごくいろ)
形といい色といい……盤は言うまでもなく。
本物さながらに作られた石は、上塗りされたニスにより、まるで硬質な大理石のようにツヤツヤと光輝いている。
床にふせる信玄様を思い、ひとつひとつ丁寧に作った佐助君の気持ちが手に取るようにわかる。
オセロなら、囲碁がわからない私でも少しは信玄様の相手になれる。
私は佐助君に信玄様を託された事が、役に立てるという事が、嬉しかった。
それから毎夜、オセロにいそしむ日々が続く。
「あれ?」
「降参かい? 姫?」
「あれ~~、どうしてこうなったんでしょう?」
「くくっ」
「何でだろ。毎回置く場所がなくなっちゃいます」
「ふっ、もう一戦、やるかい?」
優しく柔和な笑みを浮かべ、温かみが通う口調で私に訪ねる。
「もちろんです!」
向かい合わせに座る信玄様はあぐらをかき、両手を交互に袖に入れると、面白そうに喉を鳴らした。
「くくっ」
処狭しと置かれた燭台の炎は、眩しい程に部屋を明るく照らし、その灯影がゆらゆらはためきながら、庭に面した障子に映る。
盤上の石を両手でかき集めていると、耳の奥に染み込むような優しい声が、襖ごしに響く。
「失礼致しまする」