第6章 白(しろ)と至極色(しごくいろ)
ホッとした表情でにっこり微笑むちよさんに、申し訳ない気持ちになり深々と頭を下げる。
「いつもありがとうございます」
「侍女にこうべを垂れてはなりませぬ。
ろき様のお世話させて頂きます事が、何よりの喜びでございます。いつでもお申し付けくださいまし。どうか、ご無理だけはなされませぬよう」
ちよさんの温かい言葉に、寂しさで空いた心のすき間が少しずつ埋まっていく。
「ありがとう、ちよさん」
「また、そのように……ふふ」
「あ、ごめんなさい」
「ではろき様、ゆうげの支度は出来ておりますので、召し上がれるようでございましたらいつでも」
「はい、ありがとうございます」
この場を去るちよさんの後ろ姿を部屋から見送ると同時、突然襖ごしに信玄様がひょっこり顔を覗かせた。
「わっ! びっくりした!」
「驚かせてすまないね。気分はどうだい?」
「え、あ……全然大丈夫です」
「良かった。少しばかり俺に手ほどきしてくれないか?」
「手ほどき? 私が? 信玄様にですか?」
「先日、佐助から暇潰しにと貰い受けたんだが……遊び方がさっぱりわからなくてね」
困り顔で差し出されたのは【オセロの盤と石】。
「オセロ!?」
「姫と佐助の時代の物なんだろう?」
「はい。でも、こんなに立派なものは見たことがありません。
これ……佐助君が作ったんですか?」
「ああ、そうらしい」
「さすが佐助君……」