第6章 白(しろ)と至極色(しごくいろ)
何気に障子を開け、縁側の柱にもたれながら、ぺたんと腰をおろした。
目に映るのは、紺青の澄みきった秋空の下、ひっそりと静まり返る手入れされた庭。
いつもと違う喧騒のない空間に、心細さと切なさが一気にせりあがる。
両手で包むように下腹をさすりながら、そこにある命に語りかけた。
「ごめんね、弱いママで。でも淋しいんだぁ。
すごく淋しい」
「――ろき様? ろき様?」
誰かが私の名を呼ぶ。
音は次第に大きくなり、とんとん……軽く肩を叩かれた。
ふと顔を見上げれば、眉間に皺を寄せ心配そうに私をじっと見つめるちよさんがいた。
「ちよさん?」
「ろき様、いかがなされました?」
「え?」
その言葉に辺りをキョロキョロ見回せば、夜のとばりが下り、月が雲のすき間から薄く光を落とす。
そのほのかな明るみの中で、ししおどしがスコンと石を打つ音が響きわたった。
先程とはうって変わった時間の流れに、頭が追い付かず、しどろもどろになる。
「あ、あれ?」
「夕げをと参りましたが、お返事なく心配になり無作法を承知でお部屋へ入らせて頂いた次第にございます。
お加減でも悪うございますか?」
「あ、え……ち、違うの。
なんだか……
いつの間にか随分寝てしまってたみたいで……
心配かけてごめんなさい」
「さようでございましたか。
お声を聞いて……安心致しました」