第4章 笹色(ささいろ)
お腹いっぱいになり胸をさする私の横で、手際よく周りを片付けた幸村は目の前で突然背を向けると、お尻の先が地面に触れそうな程深くしゃがみこんだ。
「……ほら」
「え?」
「はやくおぶされ」
「歩けるよ……」
「いいから、早く」
「う、うん」
幸村に促され、目の前にある筋肉質のたくましい背中に手を伸ばす。
「ちゃんとつかまっとけよ」
そう言うと腹に力を込めたような野太い声を発し私を背負い立ち上がる。
「うしっ」
「重いでしょ……?」
「軽い」
「噓つき……」
「………重い」
「ほら!やっぱり……」
「重かろうが軽かろうが関係ねえよ。
なんか問題あんのかよ」
「恥ずかしいもん……」
「お前なあ……
ほんっと毎回思うけど、今さらすぎんじゃね?」
「恥ずかしいものは恥ずかしいもん……」
「なんだそれ。
俺にはわかんねえけど女はそういうもんなのか?」
「そういうもんって……普通そうだよ!」
「女ってわかんね」
素っ気い言葉に、肩越しに覗き込んだ幸村は思い詰めるような顔つきで、群生する笹の小道を黙々と一歩ずつ踏みしめながら押されるようにゆっくりと歩いている。
「幸村? どうかした?」
「俺は……女の気持ちがほんっとわかんねえ。
ろき、お前さ……
さっきの唄、もっかい歌ってくれよ」
「さっきの? 羽の唄???」
「おう」
「うん」