【松】終身名誉班長とマフィア幹部と汚職警官から逃げたいんです
第1章 終身名誉班長一松
もう自分でも何を言ってるか分からない。
与えられる快楽に空腹感も睡眠欲も何もかもどうでもよくなり、ただ泣いていた。
そして一松さんにもう一度キスをされる。
「ナノ……っ……」
名前を呼ばれた。
私は離さない、というように一松さんを抱きしめ、
「あ……ああ……あ――っ……!」
汚れた六畳間の、薄汚れた布団の上で絶頂を迎えた。
そしてわずかに遅れ、一松さんが息を吐き、私の中で達した。
…………
…………
一松さんと寝て良いことがあるかと言えば、限りなく狭いけどシャワー室を使えること。
まあ狭い部屋のシャワーに二人で入った後、どうなったかはご想像の通りですが。
あと私が寝ている間に、制服や下着がいつの間にか洗濯、乾かされていることだ。
でも私を抱きしめながら寝ている一松さんが、洗濯機を動かしているとは思えない。
なので、部下の人がやっているのかも。死ぬほど恥ずかしいけど、割り切るしか無い。
「おまえって、コトが終わると無口になるよな」
無言で仮眠室のゴミを片付けていると、一松さんに言われた。
一松さんは再び、書類仕事に戻っている。
班長は上で突っ立って見ているだけ、とやっかんでいる作業員も多いけど、上に立つだけあって、デスクワークの量もハンパではないらしい。
「ゴミ……ここに置いておきますから」
「ああ」
お礼の言葉も無しか。
でも、終わった終わった。さっさとチョコレートをもらって帰ろう。
そしてたこ部屋でちょっと仮眠して、また家畜の生活に戻るだけだ。
「なあ、この部屋に一緒に住まない?」
「は……?」
予想もしなかったことを言われ、私は目を丸くする。
一松さんは新しい煙草に火をつけながら、
「理由をつけて下に降りて、いちいち呼び出すのも面倒だしな。
おまえがここにいれば、いつでも寝られるし掃除とかやってくれるし……」
「お断りします!」
てか死ね。この関係が合意の上のものだと思ってるなら、そのアホな勘違いを全力で叩きつぶす!!