【松】終身名誉班長とマフィア幹部と汚職警官から逃げたいんです
第4章 後日談&おまけ
■おまけ
※後日談ラストより少し前の話
◆終身名誉班長、一松
待っている。
海の見える道の上で、ナノを待っている。
青臭いガキのように胸を高鳴らせ、可愛げのない女を待っている。
一生、ブラック工場に閉じ込められると思っていた俺だが、妙なこともあるものだ。
同じく一生、工場で飼われるはずのナノと、外出が出来るなんて。
俺は腕時計を何度も見、待ち合わせ時間を確かめる。
……ん? 同じ場所につとめているはずなのに、なんで待ち合わせてんの、俺ら。
疑問に思ったが、それはすぐに霧散する。
「一松さーん!!」
道の反対側から澄んだ声がしたからだ。
心臓が飛びそうになる。そしてナノが来た。
「……っ!」
いつもの性別不明の作業服では無い。
え。何、そのノースリーブの白ワンピース。可愛げのある帽子までして、こんな男とのデートに張り切りすぎじゃね?
でもナノは顔を真っ赤にし、
「お待たせしました! デートっていうから嬉しくて……」
ウソだろ。あの無表情で無気力なナノがこんな素直なことを言うなんて……!
ナノはいつも、こちらを見る度『あー、こいつか』と舌打ちしそうな(そして押さえつけて無茶苦茶にしたくなる)顔をするのに。
今は俺を見て、大輪のヒマワリのように輝いている。
ジッと見過ぎただろうか。ナノは恥じらうように、
「あ、あの……やっぱり、派手、ですかね」
これまた似合わないことに、身体をもじもじさせ、恥ずかしそう。
そうしていると、年相応に見えてくるから不思議だ。
「あ……ああ、まあ悪くはねえな」
「本当ですか? 嬉しい!」
顔を真っ赤にして頬を押さえる。誰コレ。本当にあのナノ?
工場の外に出たからテンションが違ってるの?
それとも……俺とデート出来て、そこまで嬉しいの?