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【松】終身名誉班長とマフィア幹部と汚職警官から逃げたいんです

第3章 マフィア幹部カラ松



 被害者の私が『何もそこまで』と思うくらい、リンチは凄惨を極めた。

 私は怖くて目を閉じ、おそ松さんにギュッと抱きついた(そして後で一松さんに怒られた)。
 暴力そのものも怖いが一松さんとおそ松さんが、笑いながらそれを見ているのがもっと怖かった。
『この人、まだ生きてるの?』と思うくらい、奴がズタボロになったところで、青シャツの人がやっと止めさせた。

 ぴくりとも動かない男を青シャツの人は無表情に見下ろし、解体してやれと命令した。
 私にはピンと来なかったけど、男には意味が分かったんだろう。
 男は、頼むからこの場で殺してくれ、と泣きじゃくり出した。

 でもすぐ口に詰め物をされ、舌をかみ切ることも出来なくなり、見せしめに工場内を引きずり回された後、連れて行かれた。もちろん二度と見ることはなかった。
 
 それがカラ松さんとの出会いだった。
 最悪である。そして、その日のうちに呼び出された。


 そのときは、まさか抱かれると思ってなかった。

 だって、本来ならブラック工場にいるはずのない若い女がいるとバレたんだから。
 私はあの男より過酷な運命をたどるだろうと確信した。
 一松さんでさえ覚悟したのか、私を抱きしめチョコレートを一枚くれた。
 いや、だから何でチョコレート。今生の別れと思うなら、もっとマシなものをよこせや!

 ……コホン。

 私は夜の世界に行き、二度と帰って来れないんだと、ガクガクしながら車に乗ったのでした。

 そしてホテルに連れて行かれ、ちゃんと奉仕すればブラック工場に返してもらえると知り、目を丸くした。
 
 何で?
 マフィアの幹部だし、きれいなお姉さんにいくらでも来てもらえるでしょう。

 何で私?
 懸命にご奉仕しながら、それとなく聞いてみた。
 カラ松さんは笑いながら言った。

『一松とおそ松が、妙におまえを庇っていたから面白そうだと思ってな。
 案の定、おまえを連れて行くと言ったときの二人の顔は見物だった』

 だからひどくないか、私の扱い……と思ったけど『これなら一回限りで終わりそう』とホッとした。
 マフィアの幹部のお相手になるのに、さすがに私は論外すぎるしね。

 ……結論から言えば次もその次も、その次の次も、延々と呼び出しが続いたのだけど。

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