【松】終身名誉班長とマフィア幹部と汚職警官から逃げたいんです
第3章 マフィア幹部カラ松
はああああ……。いらん回想から我に返り、ため息。
今回は車内で手を出される気配は無さそうだけど、気が重い。
カラ松さんは私の隣に座っていて、時々、大きな手で私の手を包んでくる。
多分、仕事の電話とかしてるんだろうけど、たまに私を抱き寄せたり、悪さをするように腿を撫でたり……際どいとこまで撫で上げてこないで下さい。
そしてまた、多分電話に集中してる。私はホッと胸をなで下ろす。
……。長いな、まだつかないの?
いつも使ってるビジネスホテルだと、そろそろ着いてるはずなんだけど。
私の思考はさらに過去に戻る。
カラ松さんとの出会いはどうだっただろう……。
そう。かなり前になるけど、工場に来たばかりの新人がいた。性犯罪を何件も重ね、他にも色々やらかし、ついにブラック工場に売られるまでに堕ちたという。
来たばかりで、ここの怖さをよく知らなかったんだろう。
仕事をサボった上、備品を取りに来た女――私を見つけ倉庫の隅で押し倒した。
私は抵抗しなかった。
こういうとき逆らっても暴力を受けるだけだと、誰かさんに学習させられてたもので。
それを同意の印と勘違いしたんだろう。男はニヤついた笑いでご自分のお粗末なモノを出し『おまえ誰とでも寝るんだってな。良くしてやるからよお』と小物臭あふれる台詞を放って私の服を脱がした。
いや誰とでもというわけでは……言ったら殴られるだろうから黙ってたけど。
犯罪被害による遅刻は、罰則の対象外になってくれるかなーと考えながら、私は天井の鉄骨を数えていた。
次に悲鳴を聞いて目を開けたとき、男は下半身裸の状態で、黒服の男たちに殴る蹴るされていた。
初めて見る青シャツにサングラスの人が、壁にもたれ、葉巻を吸っていた。
おそ松さんが、半裸の私に服をかけながら、もっとやれーと煽ってた。
腕組みしている一松さんは自分が殴りたそうな顔。いや覚えてる限り、数回は乱入して男の股間を容赦なく蹴り上げていた。
どうやら工場を視察に来たマフィアの幹部が、現場を見つけたらしい。
私のことは関係なく、マフィアの定めた規律を破った者へのリンチが始まったわけだ。