【松】終身名誉班長とマフィア幹部と汚職警官から逃げたいんです
第3章 マフィア幹部カラ松
このブラック工場の事実上の所有者たるマフィア。その幹部であるカラ松さんがいた。
だが彼を見る一松さんは――敬礼しているにも関わらず、下から見て分かるくらい殺気を放っていた。
それに気づいた様子もなく、いや明らかに気づいていながら、カラ松さんは無視して気安く話しかけている。
のれんに腕押しな相手の様子に、敬礼を解き、渋々応じる一松さん。
終身名誉班長のカラ松さん嫌いは有名だ。
陰で堂々と『クソ松』呼ばわりし、自分の前で彼の話をした者は例外なく殴り飛ばすそうな。
しかし、憎悪の原因は謎。
私が来る前は、むしろ良好な関係だったらしいんだけど。
まあ興味はないし、私にはどうでもいい話だ。
一方、おそ松さんは手すりに頬杖ついたまま、カラ松さんにあいさつ。
それに苦笑しながら、怒ることもなく、手を上げて応じるカラ松さん。
警官とマフィアの談笑。まさに官憲と犯罪組織の癒着の絵、そのものか。
ボーッと見上げてると、工場の名目上の所有者である工場長が走ってきた。
彼は汗をかき、揉み手ながらに自分よりはるかに年下なカラ松さんに頭を下げる。
鷹揚にうなずき何かを話すカラ松さん。
「作業を再開する! 全員、配置につけ!」
リーダーが、全員をどやしつけた。
私も慌てて自分の配置に戻った。今のは運が良かった。
今度こそ、失敗しないようにしないと。
だけど作業が再開される前に、リーダーの携帯が鳴る。
リーダーは電話を受け、少しして『了解しました』とうなずき、私に、
「六番、作業から抜けろ。カラ松様がお呼びだ」
それを聞いて私の心が絶望に染まる。周囲からは同情の視線が向けられた。
……まだ飽きてなかったのか。
嫌だ。心底から逃げたい。
これなら一松さんとおそ松さんを同時に相手する方がまだマシだ!いや、マシか? この前、二人にヤラれたときは地獄で――いいいいや、どうでもいいわ!!
とにかく逃げたい。超逃げたい。
逃げたことあったなあ!
一回、どうにでもなれとマジで逃げ出したのだ。
速攻で捕まり、一松さんの前で犯されるっていう特殊な罰を受けた!
あはははははは!!……はは……は……。