【松】終身名誉班長とマフィア幹部と汚職警官から逃げたいんです
第2章 汚職警官おそ松
「まあ、簡単じゃないけどさ。飛行機でどこか別の国に逃げようよ。
田舎の小さな教会で二人きりで結婚式を挙げてさ。
俺は働いて、君は家で赤ちゃんをあやしながら俺の帰りを待って」
おそ松さんの目は真剣に見えた。だからこそ――。
「――という実現する気ゼロの夢を、哀れな境遇の女の子に語り聞かせ、一瞬の夢を見させて、あとは搾取し放題。
なーんてクズ警官が、私は一番嫌いですよ?」
するとおそ松さんは目を丸くして、一瞬だけ動きを止め、
「俺、やっぱ君が好きだよ。頭の良い馬鹿な子って」
何だそれ――と思ったけど、抽挿が一気に激しくなり、返事は出来なかった。
「あ、あ……や……あ……っ……」
いや、させる気がなかったのかもしれない。
「や、あ、あ、あんっ、やぁ……だめ、……あ……」
「でも、半分は、ホントだったけどね。
あーあ。ライバルが一松だけなら、とっくに、君を……」
何を続ける気だったんだろう。何がウソで、何が本当だったんだろう。
「ナノ……っ……――――……」
そして、おそ松さんは噛みつくような激しいキスをして、私を強く強く抱きしめ、私の中で達した。
…………
…………
身支度をととのえ終わったところで、私は体力もつき、資材置き場にへたり込んだ。
「はああ!? 昨日の昼から何も食べてないー!?」
ベルトを締めながら、おそ松さんは目を丸くして呆れていた。
終わってすぐ呼び出されたもんなあ。
水くらいはもらったけど、食事は多分、昨日の昼に支給された腐りかけの弁当が最後だったような。
その後のお勤めに次ぐお勤めで、もう目の前がかすむ。
「ひっでえなあ、一松の奴。ヤルだけやっといて何もなしかよー」
その言葉、そっくりあんたにも適用したいわ。
「何か持ってませんか?」
「うーん。お金はあるんだけど、ここじゃ、役に立たないよね」
「私物は持てませんしね。ちゃんとした身体検査や持ち物検査も朝晩にあるので、紙幣なんか持ってたら尋問対象ですよ」
「ごめんごめん。そうと知ってたらチョコレートくらい持ってきたのに」
いや何でチョコレートなんですか。大好きだけど!
おそ松さんは制服のあちこちをゴソゴソ探し、
「ごめん! 何も無い! 許して!」
パンッと手を合わせてくる。
そうですか、さよなら、死ね。