第2章 HONEY & LOVER
家までの道すがら、私の頭の中は足立くんの言葉でいっぱいだった。最初は、小林くんを見返すため。そして今は、私自身を傷付けるため。
あんな風にカミングアウトをしてきたからには、これからは遠慮なく何かをしてくるだろう。
クラスメイトだからこそ、簡単に付け入ることが出来るのだと言った足立くんの言葉は酷く冷たく聞こえた。
そんな時、私の手に力がこもる感触。フト見上げれば、強い眼差しの朔良くん。その表情を見ては、今の私は一人ではないことを身にしみて理解できた。
「朔良くん。」
「ん?」
こうして、当たり前に返してくれる言葉は優しい。
「あの……あのね……。」
朔良くんの名を呼んだものの、上手く言葉に出来ない私。そんな私を見かねてか、朔良くんは私を抱き締めた。
「なぁ、知ってんだろ?俺は独占欲が誰よりも強いってこと。その俺から、お前を奪わせるダセェ真似するわけないだろ。」
そう言ってのけた朔良くんの表情は、既に大胆不敵なものだった。何となく朔良くんらしいかも。
「ま、そう言っても、お前は不安だろうな。そうだな……暫く、お前のとこで寝泊まりするか。」
「えっ?」
当たり前のようにそう言った朔良くん。これは朔良くんの中では、決定事項みたいだ。
「ウチに来るの?」
「嫌か?」
「そ、そういう訳じゃ……す、少し恥ずかしいって言うか……。そ、その……同棲みたいだから。」
あれ?朔良くんの目が細められたっ?
「俺は本当にそうなってもいいけど。」
「えっ?」
「クックッ……狼狽えすぎ。何想像してんだ?イヤらしいこと……とか?」
増々狼狽る私に、朔良くんはおかしそうに笑う。本当に朔良くんには敵わない。でも、フト朔良くんが真顔になった。
「不安とか得も言われぬ恐怖感とか、そうなったときは俺にぶつけていい。俺はちゃんと受け止めるから。な?」
「うん。ありがとう、朔良くん。惚れ直しちゃった。」
咄嗟に出た言葉に、珍しく朔良くんは顔を赤くした。
珍しいシチュエーション。でも、朔良くんの違った一面を見られたことは嬉しいと思う。
周りにも話をして、協力してもらおう。私は一人ではないことを、朔良くんが教えてくれた。
それに、理不尽な足立くんに負けたくない。だから、私も戦う。