第2章 HONEY & LOVER
その場に残されたアイツは、暫く茫然としていた。事情が分からず、どうすればいいか分からない様だ。
ただ1つ。あの男は、アイツを傷付けた様としている。何の為に?
「大丈夫か?」
「うん。あ、あの女の子……。」
近付けば、やはりアイツに似た容姿をしていた。しかし、どういう意図で行動を共にしていたのか。
「あの彼に、この子は告白したんだって。最初は断られたみたいなんだけど、言う通りにするなら特別扱いしてやるって言われたらしいの。」
「特別扱い?そもそも、言う通りって何だよ。……ラブホのことか。」
その女は力なく頷いた。最初は断ったらしいが、無理矢理連れ込まれてから、後はなすがままだった様だ。
「で、何でコイツを傷付け様としているのか分かるか?」
「足立くんは……小林くんをライバル視してるみたい。何一つ優位に立つことが叶わなかったって言ってた。」
つまり、小林ってヤツがコイツのことが好きだから手に入れたら、優位に立てると思ったのか。宛が外れた様だが。
「私は、どうして……あんなに嫌われていたんだろう?」
「小林くんが好きで……そして、貴女も小林くんと同じ人種だからだって。」
あの男は、クラスメイトだ。今後、更に目が離せないだろう。ったく、こんなことで傷付け様とするなんて。
「ますます目が離せないわね。私も気を付けるわ。同じクラスだしね。」
「それより、体は大丈夫?」
「避妊はしてたから多分……。でも、もう止める。見込みないって分かったから。だから……。」
「今日は私が送ってくるわ。二人は折角だから、ゆっくりして頂戴。」
女のことは宗に任せることにした。二人で歩き出したまま、お互いに無言だった。この先のことを考えれば、不安で仕方無いだろう。
宗にも、コイツの友人にも頼るのがベストだろう。そして、不本意だが……委員長にこのことを話した方がいい。
コイツがさっきの女の様に、好き勝手に弄ばれては困る。そんな目に合わせたくない。コイツが悲しむ顔をみたくない。
ああいう輩は、人前では何食わぬ顔をして近付いてくる。付け入られない様にしなくては。
俺はコイツを失いたくない。どんなことをしてでも守り抜く。繋いだ手に、キュッと力を込めた。