第2章 HONEY & LOVER
浮かれてる?うん、自覚ある。今日は、朔良くんと会えるから。だから、近所のスーパーに来てる。
何か美味しいものを……なんてことを考えながら、足りなくなった食材の補充のために来ていたんだ。
マイバックに積めた食材を下げては、家へと向かう私。頭の中は、朔良くんのことでいっぱいだった。
もう少しすれば学校も始まるから、そうすればもう少し会えるかななんて考えていた。
「あれ……。」
正面から歩いて来るのは足立くん。そして、やはり私に似た容姿の女の子のツーショット。女の子の表情は冴えない様に見える。
足立くんが私に気付くと、女の子に向かって何かを言っている。女の子は首を降っては、足立くんの腕を掴もうとした瞬間…………パシッと手を振り払う容赦ない音がした。
泣きそうな顔の女の子。しかし、気に止める様子もなく女の子をその場に放ったらかしては、私へと近付いてきた。
「変なところを見られちゃったな。でも、誤解しないで?ただ俺は、あの女に付き纏われていただけ。本当に迷惑してたんだ。」
「…………そ、そう。」
「今、一人?」
周りをキョロキョロ見回している足立くん。私は足立くんの背後で泣いていた女の子に視線を向けた。
「檜山は一緒じゃないの?若しくは、友達とか。」
「朔良くんは、直に来る。さっき、連絡あったから。」
「へぇっ…………まだ、付き合ってたんだ。」
不愉快気な表情を浮かべては、躊躇なく私の腕に手を伸ばしてきた。咄嗟に、距離を取る。
「何、それ……警戒心半端ないな。俺が怖い?ま、何でもいいや。折角だから言っておくけどさ……俺、お前のこと嫌いだから。」
突然のカミングアウト。じゃあ……何であんなこととか頼んできたりしたの?疑問が浮かぶ。でも、今目の前にいる足立くんに聞くのは躊躇われた。
「そう。」
「淡白な返しだな。俺のことなんて、最初から眼中無しってことか。全く、お前を傷付けたら少しは気分が晴れると思ったんだが……。」
「残念だが、お前にこいつは傷付かせねぇ。」
聞こえた声は、聞きなれた声だった。そして、あの女の子を気遣うハルちゃん。
「ったく、相変わらず忌々しいヤツだな。もう少しでそいつを……ま、いいか。同じクラスだし、時間はある。じゃあな。」