第2章 HONEY & LOVER
ハァッ……また、溜め息。俺自身、どうにも出来ねぇ。つい、出ちまうからな。
「朔良……もう少しだから、我慢しろって」
芹が苦笑いしながら、俺に意見する。そんな芹に、軽く睨み付けた。
「仕方無いわよね。何だかんだ忙しくて、デートも儘ならない訳だもの。心配事も有るわけだしね……」
「だからって、ボーカリストなのに煙草を吸いすぎだろ!!」
「まぁまぁ、千哉。もう少しで落ち着くから」
夏フェスが終わってから、中々思うように時間が合わない。あいつと会ったのは、本当に短い時間の2回だけ。
早朝からの叔母さんの手伝いやら、友達との映画や買い物…………嫌、どちらにしても昼間は会えなかった。
何だよ…………あいつの飯を食うくらいの時間しかないって。それに、面倒な存在がいるし。まだ、同じ事務所の奴ならまだしも。
あの女が来なくなったのを良いことに、また、違うアイドルが…………いい加減マジでウゼェんだけど。
そんなの芹にでも、くっついとけば…………。
「本当に、朔良……ご機嫌斜めだなぁ。って、誰か来た?」
「開けんな。ウゼェから」
「そんな訳にもいかないだろ?」
芹が控え室のドアを開ければ、当たり前に中に入って来たフリフリの衣裳を来た女二人組。今度は二人だ……。
で、何で俺を挟んで両隣で言い争いすんだよ。そういうのは余所でやってくれ。
「ねぇ……いい加減止めてくれない?そういう醜い争いは、僕たちの控え室でやらないで欲しいんだけど」
珍しく千哉が、女二人に向かって言葉を吐いた。そこまでは良かった…………で、今は、三人が言い争い。
宗が必死に宥めているが、収まる様には見えねぇ。
ん?今、何かキレた音が聞こえた様な……
「いい加減にしろっ!!出ていけ!!」
叫んだのは、宗だった。みんな目が点になっていた。あの千哉ですら……。
女二人は控え室から追い出され、2度と入室禁止の刑になったらしい。
「あら、私ったら……ごめんなさい。大声出してしまって。でも、ちーちゃん。あまり、言い争いするのはダメよ?」
「わ、悪かったよ……」
恐るべし宗……。兎に角、落ち着いた……そう思っていたんだ。
「なぁ……入室禁止じゃなかったか?何で、来るんだよ……逞し過ぎんだろ」
ハァッ……