第2章 HONEY & LOVER
朔良くんと私のマンションに向かう途中、朔良くんは小さな声をあげた。見上げれば、何かに視線を向けている。その視線を辿り……私は、目を見開いた。
「あれは……」
「男の方は兎も角……女の方、顔は見えないけどお前に似てる」
「……うん」
向かいの道路で二人で並んで歩いている、足立くんと……女の子。足立くんは、女の子の手を引いている。
手を引いている…………正しく言うと、引っ張っている。半ば、強引な様に見えなくもない。
そして二人は、繁華街の方へと消えていった。
「噂の原因はアレだな……」
「うん……」
朔良くんは何やら考え込んでは、再び歩き出した。本当に見た目は、私に似ていた。これなら、間違われるのも無理ない。
似ていることは良いにしても、無理矢理感が否めなかったツーショット。二人は、ラブホに入るのを何度か目撃されている。
付き合っているのだろうか?そして、入るのは合意なのだろうか?疑問が次々と出てくる。
でも、私に確認するなんてことは出来ない。
「……眉間に皺寄ってる」
「えっ、ウソっ!!?」
「考え込み過ぎ。つーか、俺のこと忘れてねぇ?」
さ、朔良くん……貴方にも、皺寄ってるなんて、言えません。
「お前の頭の中、俺しか居ない様にお仕置だな。覚悟しとけ?」
つまり、ヤキモチですか?
「……でも、合意だといいな」
朔良くんが不意に溢した言葉の意味を理解した私は、同じことを考えていたことを嬉しく思った。
「……うん」
「あぁ、明日は夕方まで時間大丈夫だよな?久しぶりにお前を、な?」
熱い眼差しを向けてくる朔良くんに、つい、頬に熱が集まる。
「何、赤くなってんの?イヤらしいこと想像した……とか?」
「ち、違っ!!」
「違わなくないだろ。そんな赤い顔して。じゃあ……その期待に添わないとなぁ?」
ニヤリと笑う朔良くんに、必死に違うからと主張した。でも、手の平で転がされている感が否めなかったけれど。
「俺は、お前を裏切らない。信じてくれてるよな?」
「うん。でも……朔良くん、モテるから……」
「他の女なんか興味ねぇし、俺はお前さえ居ればいい。お前が合意してくれるんなら、絶対に後悔させねぇから」
えっと…合意したなら、何を後悔させないのかな?