第2章 HONEY & LOVER
「ハァッ……疲れた」
「お疲れ、朔良。にしても、あの子、朔良に執心だったなぁ」
からかい気味に話す芹に、俺は興味無さげなまま無視。人気急上昇とか事務所イチオシとか、俺にはどうでもいいことだ。
「朔良……彼女、泣かせるなよ?」
「は?いきなり何でそんな話になるんだ、千哉」
「大丈夫よ、ちーちゃん。朔良ちゃんは、彼女にご執心だもの。ね?朔良ちゃん」
んなこと言われなくても、俺自身自覚ある。他の女に興味なんてねぇし。1度でも裏切ったら、お仕舞いだって分かってる。
あんな真っ直ぐに俺を見るヤツに、嘘なんて付いたら人間として終わってる気がする。前の俺なら兎も角、俺はあいつに心底惚れてるから泣かせる真似はしねぇ。
「……LINE来た。は?」
「どうかしたのか?」
相手は誰か分からなかったけど、15分前に誰かが訪ねて来たことを俺は話した。時計は23時になろうとしていた。
「こんな時間に誰かしらね?」
「知らない番号からの着信もか……」
不安にさせるから余計なことは言っていないが、おかしいことがあれば伯母さんのところに世話になるように話してはある。
明日は、店の手伝いの日だ。暫く、厄介になる様に勧めておいた。
後少しで夏フェスだ。伯母さんには、俺から話を通してある。あいつに余計なことを言わないことも。
結果的には、迅速に行動したからか面倒なことにはならなかった。嫌……面倒なこととかではなく、噂に振り回されることは無かった。
噂は…………宗から、夏フェスの前日に聞かされた。この日は、明日の為にと早々に帰宅。あ、勿論、あいつに会いに来た。久しぶりの手料理はやっぱり旨くて、ホッとさせられた。そこに鳴り響く着信音。
「もしもし、朔良ちゃん?今、聞いたんだけど……彼女、足立って人とデート中だって」
「は?あいつなら、隣にいるけど」
声を聞かせれば、安堵した様に息を吐いていた。
「ちゃんと、私から誤解を解いておくわ。じゃあね」
しかし、今更、あいつとデート中なんて…………。やっぱり、諦めて無かったってことだよな。そこに鳴り響いたのは、の電話。相手は、いつもつるんでいる友人だった。