第2章 HONEY & LOVER
更に数日が過ぎた。そう……明日から夏休み。朔良くんが出ているテレビは全部チェックしている。この前の様に偶然会うことはないけれど、テレビで朔良くんを観られる。
歌声はやっぱり凄さを帯びていて、夏フェスに向けて頑張っているのが垣間見られた。それにしても、いい声。
「私も頑張らなくちゃ……」
課題にしている翻訳。担任に頼むと、幾冊のお薦めを貸出ししてくれた。テレビが終われば、課題を遣りながら音楽をかける。
私を包んでくれているかの様な、気持ちにさせてくれる朔良くんの歌声。私は我武者羅にペンを走らせた。そんな日が数日続く。
この日は生憎の雨。かなり激しい雨音が聞こえる。そんな中、部屋にチャイムの音が響いた。
時計を見れば、夜の10時を少し過ぎた頃。こんな時間に誰だろう?確認をしようとした時、スマホの着信音が響いた。
「俺……起きてんなら開けろ」
慌てて自動ドアを解除すれば、少しして玄関のチャイムが鳴った。慌ててドアを開けると、びしょ濡れの朔良くんがいた。
「ち、ちょっと待ってて。タオル取ってくる!!」
頭からずぶ濡れの朔良くんに、直ぐにタオルを差し出した。夏だからと言って油断すると、風邪を引いてしまうかもしれない。
「シャワー浴びる?風邪をひくといけないし」
「そうさせてもらう」
今日の撮影は雨のせいで、明日に持ち越しになったらしい。朔良くんがシャワーを浴びている間、服を乾燥機にかけた。
かと言って、服が乾くまで時間がかかる。そこで、先日届いた服を思い出した。少し早いけど、誕生日プレゼントとして渡そう。サイズ合うといいのだけど。
ドア越しにタオルと着替えのことを告げれば、返答が直ぐにきた。珈琲を淹れていると、朔良くんが戻ってきた。
「シャワーサンキュ。で、この服……男物だよな。誰の?」
誕生日プレゼントのことを話せば、朔良くんは驚いた顔をした。そして、私を抱き締めた。
「サンキュ。着やすいしデザインもいい。お前が見立ててくれた?」
気に入ってくれた様で一安心。ズボン下が長めだと書いてあったけれど、朔良くんにはピッタリだった。誂えたみたいに。
「明日、8時に起こして。今日は泊まってく」
「うん」
華美ではないデザインながらも、朔良くんは綺麗に着こなしていた。素材がいいから?