第2章 HONEY & LOVER
「そう言えば、前期試験の結果はどうだった?」
「あぁ、まぁ何とか」
「彼女様々だよな。あんな綺麗に纏められたノート貰えたんだし」
確かに……あいつが用意してくれたノートは、要点が纏められたもので分かりやすかった。お陰で何とかクリア出来た。
それにしても……あいつとは、会えないまま何日も経っている。いい加減あいつが恋しくて仕方がない。
あいつに触れたい。声を直接聞きたい。そう願うのに、中々、ままならない毎日。にも関わらず、あいつからは何も言われない。
いつも俺を気遣う言葉だけだ。俺は、あいつのことを聞きたいのに。
それでも、合間に行くガッコでは、あいつの姿を探してしまう。無意識に似た姿の女を目で追ったりして……本当に重症だと思う。
その中で、俺は目が止まった。とうとう、幻が見えたのかと思った。でも、体は勝手に動いていて……後ろ姿の女を追っては、そのまま抱き締めた。
「……会いたかった」
「さ、朔良くん?」
驚いた声は、直ぐに嬉しそうな声となる。やはり、電話越しではない声は嬉しい。
「少し……痩せた?」
「そう……か?」
「あ、あの……ここ、往来だから……」
周りからはジロジロ見られていた。俺は気にしないけど……少しだけ、道の端に移動する。
絡めた指から、あいつの体温を感じる。ずっと触れたくて仕方無かった感触。
「お前も無理してない?変わったことは?」
「ううん。大丈夫。こんな風に会えたから、元気たくさん出たよ。ありがとう、声をかけてくれて」
しかし、無情にも芹からの呼び出し。
「悪い……呼び出しだ。お前は、これから伯母さんとこか?」
「うん。朔良くん、応援してるからね。行ってらっしゃい」
「あぁ。行ってくる」
あいつをハグしては、頭に顔を埋めた。
「じゃ、またな」
あいつに背を向け歩き出す。こんなに恋しく思うのは初めてかもしれない。あいつが俺を思ってくれている……それだけで俺は頑張れる。
夏フェスまで2週間弱。その為にも、今日の音合わせに気合いが入る。あの千哉ですら驚く程に。
なぁ……夏フェス、俺だけを見ろよ?俺……頑張るから。