第2章 HONEY & LOVER
その頃……
お店で見せてもらった、朔良くん出演のテレビを見てはホクホク顔だった。どんな歌い手さんより、私は朔良くんの声が好きだ。
家のデッキには、勿論、録画している。後で、もう一回…………ううん、いっぱい見ようと思う。
伯母さんも朔良くんの声が素敵だって言ってくれた。私もそう思う……。
自宅に帰ろうとした頃、朔良くんから電話の着信音が鳴り響いた。
「もしもし?俺……」
「お疲れ様、朔良くん。素敵だったよ、とっても!!」
「当たり前だろ?お前の為に歌ったんだし……」
朔良くんがあまりにもさらりと、恥ずかしくなることを言われ…………顔に熱が集まる。
「なぁ…………会いたいんだけど」
「えっ?」
「……駄目?」
電話越しに甘えてくる朔良くんに、私はブンブンと首を横に振っていた。見えるわけないのに…………でも、朔良くんは見えているかの様に笑う。
「バーカ…………そんな強く否定しなくていい。……って、あんた可愛過ぎ。一時間後、あんたん家に行く。じゃぁ……」
私は家へ帰っては、直ぐに汗を流した。夏近くなり、暑くなり始めた頃だ。夏フェス……楽しみ。
部屋着に着替えては、珈琲を淹れているとチャイムの音が鳴った。玄関のドアを開ければ、つい数時間前一緒に居て……ついさっきテレビで見ていた朔良くんがいた。
「お疲れ様、朔良くん。どうぞ、上がって?」
「あぁ……」
朔良くんは私の目の前で立ち止まった。見上げたと同時に抱き寄せられた体。そして…………振れた唇の柔らかく熱い感触。
一頻り、唇を堪能された後…………小さく息を吐き、私の肩に顔を置いた。
「本物…だ………ハァッ…………良い匂いするな。風呂上がり?」
「うん」
「そっか…………ん、旨そうな首筋」
いきなり首筋に唇が這わされ、体が跳ねた。
「クックッ……あんた、感じ過ぎ。可愛いな…………って、顔、真っ赤……それに、俺を拒む腕の力弱すぎ。本当はいっぱい構って欲しいって思っている様に見えるけど?」
だって……仕方無いよ。朔良くんのことが好きなんだから……。恥ずかしいけれど……。
「なぁ…………俺のこと、好き?」
瞳の奥を覗き込むかの様に、見詰めてくる朔良くん。私に縋るかのような眼差しに、朔良くんの体に腕を回した。
「大好き……」