第2章 HONEY & LOVER
一生懸命に講義を受けているあいつの手に、自分の手を重ねては指を絡めた。ピクッと体が跳ねたあいつに、俺は満足しながら笑う。
「もうっ……」
怒った様な口調ながらも、全然、本気じゃなくて…………絡めた指先をキュッと握り締めた。
講義の時間はあっという間で、名残惜しいけどタイムリミットだ。あいつと分かれては、芹らと待ち合わせしている駐車場へと向かった。
「朔良……大丈夫か?」
「何が?」
「誹謗中傷の話だよ……」
俺は興味無さげに目を反らす。
「俺は別に…………あいつさえ悪く言われないならいい。元々、噂なんてどうでもいいし」
「朔良らしいけどさ……。それにしても、朔良が横恋慕って……」
「もう……せーちゃんったら。笑っちゃ駄目よ」
笑う芹を一睨みすれば、肩をすぼめては真顔になった。
「あのさ……朔良だけが誹謗中傷の対象ってどう考えても作為的だよな?」
「そうよね……一般的に言えば、あの子にだってあってもおかしくないもの」
幾ら考えても、作為の真実は分からない。でも、俺はあいつさえ噂の対象ではないのなら構わないと思っていた。
ただ、あいつが俺を好きでいて…………俺の傍にさえいるのなら。噂が原因であいつが俺の前から居なくなる時が来たとしたら………………俺は、壊れてしまうかもしれない。
テレビ局に入り、控え室に居た時だった。あいつからのLINEが来たのは…………。相変わらず呑気で俺を好きなあいつのままの内容だった。
そして、優しい…………俺を気遣う文面。
「あ…………俺、あいつにコクった」
「「「…………はっ!!?」」」
メンバーの揃った声。
「今頃、カミングアウトか?って、いつだよ」
「昨晩……」
「まぁ、素敵だわ!!良かったわね、朔良ちゃん」
宗の言葉に、口元が緩む。
「今までは兎も角…………最近の朔良は、前とは違う。……だから、俺は応援する。大事にしてやれよ?」
珍しい千哉の言葉。
「後は噂のことだよなぁ…………。一体、誰なんだろうな?」
全く気にならない訳ではないけれど…………あの男らなのかもしれないな。でも……ま、いいか…………。