第1章 FIRST AND START
何度か、あいつに連絡した。噂の話はしていない。知らないなら知らないままの方がいい。
「返事来たか?」
「……まぁな。今のところは、心配ないみたいだが……」
「でも、噂を耳にするのはそう先じゃないと思うわ。私からも、誤解だって言っておいたんだけど……。」
噂の出所は分からないみたいだ。
「……芹、ここで降ろしてくれ」
「まさか、今から訪ねるつもりか?もう遅い時間だぞ……」
「電気が消えていたら諦める。じゃぁな……」
俺は、あいつの住むマンションに向かった。そして、到着しては見上げたマンション。
俺はスマホを出しては、あいつに電話を掛けた。話し中だ…………。暫く時間をおいてかけ直したが変わらない。
悩んだ末、あいつの部屋No.を鳴らす。少しして、あいつの声が聞こえた。
「……俺…………」
ガチャッ…………
「えっ…………切れた?」
暫く、その場に立ち尽くす俺。
やがて……慌ただしい足音と共にあいつが現れた。
「さ、さ、朔良くんっ!!」
「落ち着け……」
「ご、ごめん……」
尻尾があれば、ブンブン振っているかのようなあいつについ笑ってしまう。
「突然、悪かったな……それも、こんな時間に」
「ううん」
「電話……掛けたんだがな」
あいつは、申し訳なさそうな顔をした。
「ごめん……玲衣と話してて」
あの友達とか……。まぁ、それなら……許容範囲だな。
「……っ!!?」
驚いた…………俺、あいつに抱き付かれてる?
「ごめん……………ごめんね…………少しだけ……」
不安気な声から、何かあったのだと推測出来る。…………なら、噂のことだろう。
「あっ!?電話中だったっ!!さ、朔良くん来て!!!」
あいつは俺の手を引いては部屋に連れられていく。適当に座ってと言われ、あいつは机の上に置かれたスマホを耳に当てた。
「もしもし?あの…………ごめん」
そう言えば、電話中だと言っていたっけ……。俺が呼び出したから、電話放り出したんだな。
散々謝っては、電話を切ったあいつ。
「で、何があった?」
俺が尋ねると、困った様な顔をした。