第1章 FIRST AND START
「……あいつのこと、いいヤツだって思ってんの?」
他人のことを、良くも悪くも普段は言わない朔良くんの言葉。どういう意味があるのだろう?
「うん」
「…………ハァッ……即答かよ」
えっ、何か溜め息つかれた…………何で?
「朔良くんだって、気遣ってくれたよね?」
「…………誰にもそうだって言うなら、あんたの友達……何で居心地悪そうなんだ?」
そうだ…………小林くんが話し掛けてくる度、玲衣の表情は無だ。それも、朔良くんですら気付くくらいに。
「朔良くんは……小林くんのこと、どう思ってる?」
「目障りなヤツ……」
即答でそれっ!!?
「目障りって、小林くんは朔良くんに何かしたの?」
「さぁな…………」
これは、理由は聞けない感じ?朔良くんだから心配はないだろうけれど…………玲衣のことは、何とかしたい。
「…………なるべく、一人になるなよ?」
「えっ?」
「分かったか?」
ペンを走らせながら、同意を促す朔良くん。理由は分からないけれど、きっと、その方がいいのだろう。
「……朔良くんが居てくれる?」
「……あんたがそう望むなら。……って、いつもって訳にはいかないけどな」
そうだね…………朔良くん、お仕事あるし。シュンとなる私に、見兼ねたのか……急に肩を抱き寄せられた。
「出来る限り協力はする。だから、そんな顔をするな……(付け入りたくなる……って、手後れか?)」
朔良くんは、私の頭に顔を寄せては髪にキスした。跳ねる私の体に、面白そうに笑う朔良くん。
何かしてやったり感が見え隠れしているけど、不思議に嫌悪感は無かった。最早、朔良くんは優しい人だって刷り込まれているからだろうか?
恐る恐る……朔良くんの体に腕を回した。
「…………フゥッ……」
自然と安堵の息を吐く。朔良くんは、ただ黙って私にされるがままだ。やっぱり、居心地いい…………。
私は知らない…………。
朔良くんが、優し気な眼差しで私を見ていたなど……回した腕に少し力を込めた朔良くんに、よりお互いの体温を心地好く感じていた。