第1章 FIRST AND START
全て洗い流してさっぱりしました……なんて言えれば良かったのだけどそうはいかない。
それでも、さっきよりは気持ちは落ち着いた。
朔良くんは、私に判断を委ねる。やりたいかやりたくないか……。無理矢理踏み込んできたりしない。
朔良くんは、直ぐに浴室に消えていった。ノートを見れば、かなり片付いている。
いつもこんな風に……なんて思っては、つい、有り得ないかも?なんて思い直して笑ってしまう。
そう…………笑える。
私って、本当に甘やかされてるなぁなんて実感してる。一人になりたいかなんて聞かれたら、頷くことなんて出来ない……。
本当に、妙なところで私は素直だ。朔良くんは、それを分かってて話を振ってくる。
それに…………朔良くんに抱き締められて、私が嫌がらないことも知ってる。
やっぱり朔良くんは狡い……。こんな風に甘やかされたら、離れられなくなる……。でも、分かってても甘えてしまう……。
…………ううん、もう手後れ。
もし、好きか嫌いって聞かれたら…………嫌いなんて言えるはずがない。
暫くボンヤリとしていたが、フト思い出した……。
小林くんには……謝ろう。あれは、私が悪い……。気遣ってくれたのに、あんな風にしてしまった。きっと、心証を悪くしていると思う。
「……うん、謝ろう…………」
「……誰に?」
隣に腰を下ろした朔良くん。じっと私を見ている。
「……こ、小林くん…………」
「……へぇっ…………」
な、何で不機嫌?それに、不貞腐れてるっぽい?
「あっ!さ、朔良くんもごめんね!!」
「俺は、“も”か……」
「ち、違うよ!!そういう意味じゃなくて」
力説すれば、ニヤリと笑う朔良くん。
「もう……そうやってからかうんだから」
「……俺には、ごめんはいらねぇよ。俺は俺の意思でやってんだ。……だから、ありがとうの方がいい」
私の頭を撫でては、また、課題の続きに取り掛かる朔良くん。
「……珈琲は?」
「あっ!!?す、直ぐに淹れるね」
リベンジの珈琲を淹れては、朔良くんに差し出した。
「サンキュ…………ん、旨い……」
いい声…………耳の保養。
「なぁ…………」
朔良くんが私を見て、こう言った。