第1章 FIRST AND START
湯が沸いた音がした。でも、あいつは動くそぶりが無かった。不思議に思いキッチンを覗き込めば、苦しそうで辛そうな表情をしていた。
「おいっ……大丈夫か?」
目を見開いては、俺を見るあいつ。でも、俺だと分かると安堵の表情を浮かべた。
「ごめん、ちょっと考え事してただけ……大丈夫」
「大丈夫じゃない奴に限って、そう言うよな……それに、前にも言っただろ。大丈夫なら、最もらしくしろって………………なぁ、本当は大丈夫なんかじゃないんだろ?」
あいつは、俯いては黙り込んだ……。拳を強く握り締めているあいつ。
「…………分かった。言いたくないなら無理には聞かない。でも、言いたくなったらいつでも言えよ。笑ったりバカにしたりしねぇから……」
あいつは、コクりと頷いた。
「……一人になりたいか?なりたいなら送ってやる」
あいつの反応はない。
「……ったく、頑固なとこあるくせに、こういうところは正直だな」
一人になりたいと思うのなら、俺は立ち入らない方がいいのかもしれないと思った。でも、あいつは……妙なところで素直だ。
一人になりたいなんて、思ってないってことだよな?だから…………遠慮しねぇから。
躊躇なんかしねぇ…………ちゃんと意思持って、甘やかしてやるよ。その為に存在するんだからな……。
腕の中に抱き入れれば、拒むことも怖がることもなかった。大人しく抱き締められている。
「何もしねぇから……泊まってけ。一人になりたくねぇんだろ?」
「…………うん」
あいつの意思は聞けた。なら、いつまでも暗い顔させるのはやめだ。
「風呂でも入ってゆっくりして来い。少しは気分も晴れるだろ。着替えは適当に出してやるから…………あぁ、また頭からずぶ濡れにされたいなら手伝ってやるが?」
「…………やだ」
「そうか。ほら、行ってこい」
あいつを浴室に押し込めれば、暫くして、シャワーの音が聞こえてきた。取り敢えず………泊まり決定だな。
「あ、着替え…………」
華奢な体に反比例した、豊かな胸元。目に毒なんだが…………ま、仕方無いか。
着替えを置いてから、課題の続きをやっていると……あいつが戻ってきた。
マジで…………目に毒。