第1章 FIRST AND START
「お疲れ様、朔良くん」
「あぁ」
朔良くんは、さっきと違って不機嫌そう。
待ち合わせだって言ったから、朔良くんが現れたから小林くんは帰るのだと思い込んでいた私。でも、違った……。
「なぁ、檜山。これから課題やるんだろう?俺も手伝ってやるよ。人数がいた方が早く終わらせられるからな」
小林くんの言葉に、不機嫌さを更に露にした朔良くん。でも、私もこれには驚きだった。勿論、玲衣も同じく。
「……必要ない」
「そんな冷たいこと言うなよ。折角、手伝ってやるって言ってんだからさ」
今日の小林くんは、引き下がる素振りがない。小林くんは、朔良くんとは仲が良かった風には思えないし……。
「なぁ、さんからも言ってやってよ。皆でやった方がいいって」
そう言っては、私の肩に手を置こうとした小林くん。私は無意識にビクリと体を震わせては、その手を怖いと思ってしまった。
どうしてだろう?
「ご、ごめん……いきなりだったから、ビックリしただけ……」
「あ、俺の方こそ驚かせたみたいでごめん……」
その時、皆の前で朔良くんに肩を抱き寄せられては、耳元で囁かれた。私の心の中を見透かされた様で驚く。
「……怖かったんだろ?」
私は黙ったまま、小さく頷いた。
「ひ、檜山、そんな馴れ馴れしくしたらさんが驚くだろ。離れろよ」
「は?……何で、お前に指図されねぇといけねぇんだよ。それに、お前と俺を一緒にすんな。……あぁ、あんたん家、の近くだっけ?途中まで行くけど……」
朔良くんは、玲衣に途中まで一緒に帰ろうと言ってくれた。朔良くんの言葉に、玲衣は嬉しそうに頷いた。
「じゃあな」
小林くんを一瞥しては、その場から歩き出した朔良くん。私は……小林くんの顔を見られなかった。
私と玲衣は、朔良くんの後をついていく。
「……檜山くん、優しいね?」
「うん」
それに……さっき抱き寄せられた時、全然怖いとか嫌だとか思わなかった。…………何か、安心するんだよね。
玲衣は、小林くんの時とは違う様子。Liar-Sのファンと言うことを抜きにしても、玲衣の存在を無視しなかった朔良くん。
うん、やっぱり朔良くんは優しいね。