第1章 FIRST AND START
何これ……こいつの笑顔、マジで可愛いんだけど。顔を見れば、ちゃんと見つめ返してくるし。
やっぱり、今晩……帰せそうにないな、なんて思っていた。
「さ、朔良くん?」
「ん?」
「ちょっと、擽ったい…………」
あぁ、つい無意識にこいつの頬、手の平で撫でてた。
「悪い……嫌、だった?」
「ううん。朔良くんなら嫌じゃない。少し擽ったいけど」
「そうか。で、放課後……そのまま来る?」
あいつは1度家に帰ってから、荷物を持ってくると言った。俺の為にだよな?だったら、荷物持ちしねぇと。
俺がそう言えば、素直に頷いた。一度行ったからか、抵抗ないみたい?
講義の間、あいつの直ぐ傍であいつを見ていた。何なんだろうな……こいつが傍に居るだけで、満ち足りた気持ちになるのは。
「どうかしたの?分からないところとかある?」
「あ……また、夜に纏めて聞く」
あんたを見てただけなんて言ったら、あんたはどんな顔をするんだろうな……。
ん?あぁ…………俺を居抜きそうな目付きだな。ま、お前にはやらねぇけど。
見せ付ける様に、あいつに身を寄せれば……面白いように反応するあの男。
ハァッ……講義の時間は、結構楽しめたかも?チャイムが鳴り、あいつとの時間も終わった。
「最後の講義って3号館だったっけ?」
「うん。待ち合わせは時計塔でいいかな?」
「あぁ。じゃ、また後でな?」
あいつは笑顔で頷いた。あいつの頭を撫でるのが習慣になりつつあるな……。一撫でしては、次の校舎へと向かった。
次の講義……何で、こんなに長いんだろ?隣は空席……座ろうとした女が居たから、一睨みしたら居なくなった。
あいつは、今頃、一生懸命に講義を受けてんだろうな……。そんなことを思うと、俺も……なんて思ってしまう。
集中したら講義は思ったより早く終わって、あいつとの待ち合わせの時計塔へと向かった。
時計塔には……あいつとあいつの友人、そして、あの男が居た。でも、端から見ても、雰囲気は良いようには見えなかった。
あいつに喋りまくっている男とあいつの困った様な表情……それに、あいつの友人の何とも言えない表情。居心地悪そうに見える。
俺に気付いたあいつと友人は安堵した様な表情をし、あの男は……気持ち悪いくらい笑みを張り付けていた。