第1章 FIRST AND START
朔良くんから電話くれた時は、料理の下拵え中だった。冷蔵庫のストックが少なくなると、決まって色んな料理を作りおきする。
だから、朔良くんからの電話に気付かなくて……。久しぶりに、電話越しだったけれど話が出来た気がする。
それに……最近変わったことないかって、私を気遣ってくれる優しい人。そんな朔良くんだから、力になれることは遣りたい。
そんな長い時間じゃなかったけれど、話が出来て嬉しいって思う。それに、明日は同じ講義があるから、もっと嬉しい。
翌日…………。
待ち合わせの中庭。ベンチで座っていると、前に立ち止まる人に顔を上げた。
「講義行かないの?」
「うん。待ち合わせしてるの」
「待ち合わせ?」
そこに現れた朔良くん。小林くんをチラリと見ては、私に声を掛けてきた。
「待たせたか?」
「ううん。私もついさっき来たばかりだよ」
「待ち合わせって……檜山と?」
怪訝な顔をする小林くん。
「うん。折角来られるって言ったから、私から誘ったの」
「行くぞ」
「うん」
朔良くんに並び、話し掛ければ……優しい目をしては、頭を撫でる朔良くん。何か、機嫌よさそう?
今でも、少しは朔良くんを見ては騒ぐ人はいるけれど、悪意あるものじゃないみたい。
「朔良くん、ここにしよう?」
二人並んで席につけば、課題の話をする。私に体を寄せては、資料やノートを覗き込んで来た。
「?……どうかしたか?」
「えっ?」
「何か、考えてた様に見えたから……」
朔良くんは、変化に鋭い。私が思っていたのは……こんな風に、近い距離に朔良くんがいることは苦手とか怖いとか思わないなぁなんて考えていたんだ。
「ううん。大したことじゃないから。それより、今日はゆっくり出来るの?」
「あぁ、昨日頑張ったから。旨い飯、楽しみで頑張れた。それに、課題手伝ってくれるって言うし」
朔良くん……今日は本当に機嫌よさそう。
「何?何か、嬉しそうな顔してる。良いことでもあった?」
「朔良くんが機嫌よさそうだから。つられちゃっただけだよ。朔良くんこそ、良いことでもあった?」
「あんたに会えたからだな……最近、忙しかったし」
まさか、そんな風に言われるなんて思ってなかったから、つい笑顔になってしまう。