第1章 FIRST AND START
「朔良……今日は一段とイライラしてるな……何かあったのか?」
「……別に」
「別にじゃないだろ。今日、どれだけタバコ吸ってんだよ……」
灰皿には、山盛りの吸い殻。仕方ねぇだろ…………最近、あいつの顔見てねぇし。それに、あの男がこの間にちょっかい出してるって思ったら…………。
「……そんなに気になるなら、電話くらいすればいいだろ。連絡先知ってんだしさ……」
「…………出ねぇ」
「えっ?」
電話した……でも、出ねぇんだよ。知っててスルーされてんのか、知らずにいるのか分からないから余計にイライラする。
もし、あの男と一緒に…………。
「ま、まぁ、明日には会えるだろ?今日乗り切れば落ち着くんだからな」
「……あいつが作った飯が食べたい」
差し入れや弁当が不味い訳じゃない。でも、あいつの手料理…………別格だから。
それに……あいつの顔が見たい。
「あ……電話」
画面には、あいつの名前が表示。
「もしもし、朔良くん?ごめんね……電話くれていたのに。ちょっと手が離せなくて。今、電話大丈夫?」
「あぁ。手が離せないって、何かやってんの?」
「課題だよ。朔良くん、課題やってる?まだだったら、資料のコピーはしてあるから良かったら使う?」
俺のことを気遣う言葉に、少し苛立ちが納まる。
「使う。で、あんたは終わらせた?」
「ううん。まだだよ。今日は、他にも遣りたいことあったから。新しい料理試作してたの。朔良くんには、まだお礼出来てないでしょう?」
俺の為?マジで嬉しいんだけど……。
「それより、最近変わったことない?」
「変わったこと?う~ん…………?特にはないかなぁ。あ……クラス委員の小林くんとよく話す様になったくらいかな?凄いよね、小林くん。クラス委員だからって、みんなの面倒までみているんだから」
詳しく話を聞けば、課題を一緒にとか料理を教えて欲しいとか……放課後、誘われたりとか……その他諸々。
悉く、スルーするあいつ。だからって、このままにはしておきたくない。
男は狼だからな……。
「な?明日、放課後時間ある?課題遣りたいんだけど……」
……なんて、言い訳の口実作って約束を取り付ける。でも、明日会える…………。