第1章 FIRST AND START
「そう言えば、最近、檜山くんとはどう?」
いきなり、朔良くんの話題をふってきた玲衣。
「どうって……最近、会ってないし。お仕事が忙しいんじゃないかな?」
「そっか……。それと……」
玲衣が何か言い掛けた時、最近、声を掛けてくるようになったクラス委員の小林くん。私たちの前に席をとっては、話し掛けてきた。
「さん、課題やった?」
いつも、私を名指しだ。隣には玲衣がいるのに、私にしか話し掛けない。何か、腑に落ちない。玲衣は気にしてないって言うけど。
「……ごめん、今、玲衣と話してるんだ。玲衣、何か言い掛けてたよね?」
「あ、ううん。大したことじゃないから……」
玲衣は口を噤んでしまった。最近は、こんな風に話が途中で止まってしまう。
「ごめん、神沢(=玲衣)さん」
「あ、うん」
…………玲衣、小林くんのこと嫌っているのかな?素っ気ないし……。
「で、課題やった?」
「まだ、半分ってとこかな」
私の返答に、食い付くように身を乗り出してきた小林くん。う~ん……少し、こういうの苦手だなぁ……。
「だったらさ、一緒に図書館でやらない?その方が、早く片付くと思うんだ」
「ごめん……調べものの件は終わらせてあるから、後は家でも出来るんだよね。それに、玲衣と一緒にやってるから」
「……そう。じ、じゃあさ、次の課題一緒にやらない?」
どうしてこんな風に誘ってくる様になったのだろう?
「私なら大丈夫だよ?クラス委員だからって、大変だね?みんなの面倒までみて」
あれ?小林くん、何か微妙な顔してる。
「そ、そうだ。最近、俺も自炊始めたんだ。さんって、料理好きだよね?今度さ、俺でも出来そうな簡単料理教えてくれない?」
「料理?じゃあ、栄養士目指してる知り合い紹介しようか?本当に料理好きで、私も教えて貰ったりしてるんだよね」
あれ?また、小林くん……微妙な顔してる?
「お、俺はさんに教えて貰いたいなって……いきなり、栄養士目指してる人に教えて貰うのは敷居が高いし」
「そうかなぁ?覚えたいなら、ちゃんと勉強してる人に教えて貰った方がためになるんじゃない?」
(全く…………ここまで鈍いと、小林くんが気の毒。まぁ、私は苦手だけど)