第1章 FIRST AND START
朔良くんが教室に現れて、私は駆け寄った。あれ?何か、機嫌良さそう?
席……空いていなかったから、別の空いている席へ異動。この時、朔良くんは小さく笑った様に見えた。理由は分からなかったけれど。
ノートを見せて欲しいって言うから、説明もしながら……朔良くん、近いよ。でも、折角来てくれたし……それに、誘えば来る様なことを言ってくれたから気にしないでおこう。
「あ、朔良くん…………着メロのことなんだけどいいかな?」
「ん?何?」
「か、変えてもいいかな?Liar-Sの曲で、私が好きになったのがあって……」
おずおずと朔良くんを見れば、これと言って不機嫌になったりはしていなかった。
「どの曲?あんたが気に入ったのって」
私はイヤホンを朔良くんに差し出しては、曲を起動させた。
「……あぁ、これか。あんたは、こういう系が好きななんだな。別に好きにすればいい。どちらにしても、俺たちの曲だしな」
本人に聞くのって……失礼じゃなかったかな?
「……でも、Liar-Sじゃなかったら……お仕置きだな」
「えっ……お仕置きって……そんなことはしないよ?」
「ならいい」
朔良くん……何か嬉しそう?私も何か嬉しい。
講義はあっという間に終わって、少し残念な気分。
「じゃ、またな」
「うん。お仕事頑張ってね」
朔良くんは私の頭を一撫でしては、教室を出ていった。さ、私も次の教室に行かなくちゃ。
次の講義は、玲衣と一緒だ。玲衣は私の姿を見付けるなり駆け寄ってきた。
「、大丈夫だった?」
「うん。朔良くんが居てくれたんだ」
「えっ?檜山くんが?」
事情を話せば、意外そうな顔をされた。
「檜山くんが優しいのは、にだけだよ」
「そんなことないんじゃないかな?」
「ううん。断言出来る!でも、あの時私のことも気遣ってくれたのには驚いたけど。に接する時の檜山くんは別人みたいだよ」
玲衣に力説されたけど、朔良くんは最初から優しかったし……今も優しい。私には、特別扱いとかよく分からないかな?
(檜山くん……肝心のには、気持ちは伝わってないみたいだよ……私から見れば、相思相愛に見えたんだけどなぁ。檜山くん頑張って!!)