第1章 FIRST AND START
打ち上げは辞退させてもらい、私たちは家へと帰った。朔良くんは同伴してくれた。
「……悪かったな、俺が引き留めたばかりに」
「朔良くんの責任なんかじゃないよ!!絶対に違うからね?」
私は必死に、朔良くんの責任なんかじゃないことを告げる。でも、体は震えていて……掴まれた手を離せない。
「なぁ…………一人で大丈夫か?」
「…………うん、大丈夫」
「バーカ……嘘付くなら、もっともらしく振る舞えよ」
腕を引かれては、ギュッと抱き締められた。
「俺の責任じゃないって言うなら、俺は恩人だよな?なら、家にあげてコーヒーでもご馳走してもらってもバチは当たらないよな?」
朔良くんの言い分に、思わず泣きそうになった。だって、朔良くんらしい気遣った言葉だから……。
「……うん、バチは当たらないよ。でも、メンバーの人が待ってる。だから、次にお礼を…………」
「あいつらなら、今日はもうお開きだ。明日も仕事あるしな」
きっと、嘘だと思う。そうまでして、私を一人にならないようにしてくれる。
だったら……騙されてもいいよね?本当は、一人で居たくない。本当は、怖くてたまらないんだよ……。
私は、朔良くんの手を引いて、家へと招いた。言葉通りに、コーヒーをたてる。
肩から下げたギターを置いては、ベッドに凭れてはボンヤリとしている朔良くん。
コーヒーと一緒にパウンドケーキを置いた時には、朔良くんは眠っていた。
「えっ…………朔良くん?」
返事はない。えっ……ど、どうしよう?
結局、泊まっていきました。
布団は一つしかありません。仕方無いので、肩を並べては一緒に被り……寝ました。
翌朝…………あれ?ベッドで寝てるし…………何で、朔良くんが隣にいるのだろう。それに、私……朔良くんの腕の中に抱き入れられてるし。
見上げれば、朔良くんは眠ったまま……。私……朔良くんじゃなかったら、不味いことになっていたんじゃ?
ちゃんと服着てる……。朔良くんにとって私って、手のかかる妹みたいなものなのかも?
「何、百面相やってんだ?」
「ひゃあっ!!?さ、朔良くん起きてたの?」
「今、起きた……。それより…………」
私の顔を見詰める朔良くん。
「な、何?」
「……何でもない」