第1章 FIRST AND START
ライブ中、俺はあいつから目が離せなかった。そんな俺に、あいつも気付いた様。
少しは俺の思いが届けばいい……。
ライブは盛況の中終わった。暫くして、あいつにLINEを送った。
クルーの中で、連れ歩く訳にはいかないからな。待ち合わせとして、近くの公園を指定すれば……直ぐに返信が来た。
「はっ?」
「どうかしたのか?」
「あいつ……打ち上げを辞退するって」
俺も、直ぐに返信をした。
「勝手に帰ったら、おしおきに決まってんだろ……」
ライブの感想としては悪くない文面だ。それにも関わらず、辞退するなんて……。
「朔良が追い掛ける日が来るなんてな……本当に手強そうな女の子だな」
「うるさい。行くぞ」
ライブ会場を出れば、つんざくような声に揉みくちゃにされる。全く、ここにあいつが居なくて本当に良かった。
帰る道すがら、何人か後を追ってくるクルーらがいたが一睨みすれば引き下がった。
「朔良の視線は、効果絶大だな……」
「余計なお世話だ」
「じゃぁ、俺らは先に店に行ってるからな」
途中で芹らと分かれ、指定した公園へと向かった。
公園口に辿り着いた時、人が争う様な声が聞こえてきた。そして、視界に飛び込んできたのは、あいつと黒装束の男。あいつの背後に居るのは、友人らしい女。
懲りない男だな……どんだけあいつに執着してんだよ。
「また、会ったな……」
俺の声に、誰よりも男の体が跳ねた。逃げ出そうとした男の腕を俺は掴んだ。
怖々と俺の方に振り返る男。
「……いい加減にしとけ。次はないからな?」
睨み付けると、何度も頷いた。
「目障りだから、さっさと失せろ!!」
男の腕を離すと、一目散に逃げていった。
「根性ねぇヤツ……で、怪我はないか?」
茫然と立ち尽くすあいつに声をかけた。
「……さ…………ん」
「あ、おいっ!!」
咄嗟に抱き止めたあいつの体。初めて会った時と同じシチュエーションだ。
「遅くなって悪かったな……」
「……ううん」
「あんたは?怪我はないか?」
あいつの友人は、目に涙を浮かべたまま頷いた。
あのストーカー…………もし、次見たら突き出すか。心に誓う俺……。