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「DC・Liar-S」歌うたいと恋心

第1章 FIRST AND START


「Liar-Sって……凄く人気があるんだね。私……本当に知らなかった」


「でも……大半はルックス目当てだよ」


苦々しい顔をする玲衣。玲衣は、曲が好きなんだね。


朔良くんたちが現れて、私は何とも言えない気持ちになった。何か、胸のなかがザワザワする。


女の子たちからの呼掛けは凄まじくて……私は、TVを見ている様にその光景を見ていた。


朔良くんがこっちを見た気がしたけれど、きっと気のせい。私になんて気付く筈なんてない。


ライブは…………デジタルで耳にするものとは違って、心を鷲掴みにされた。朔良くんの声…………想像以上に素敵だった。


頭の中が震えることなんて、初めての経験。いつの間にか、朔良くんの声に惹き込まれた。


あれ?朔良くん…………目が合った?……まさかね。こんなにたくさんのお客さんがいるんだから。


私になんて…………そんな風に思えば、また心臓が痛んだ。今更ながら、朔良くんが芸能人なんだと突き付けられた気がした。


でも、直ぐに思い出した。


一体、この中に生身の朔良くんを知っている人はどれくらいいるのだろう?


私たちと同じ様に、寂しいとか悲しいとか……当たり前の感情を持っている朔良くんのことを。


私には、ファンの人たちの様に騒いだりは出来ない。でも、一人の人として……朔良くんを大事に思うし、朔良くんには幸せになって欲しいって思う。


……えっ?やっぱり……こっちを見てる?


私は朔良くんから、目が離せなかった。まるで、私に歌ってくれている様な錯覚。まさかと思うのに…………。


朔良くんの声に包まれ、いつもの優しい朔良くんを見せられている様で…………本当に幸せな時間だった。


ライブが終わり、ファンの人たちは出待ち状態。


「あ、LINE…………」


朔良くんからのもので、近くの公園で待ち合わせとなった。大変そうだから、打ち上げを断ろうとしたら……


「帰ったら、おしおき?」


何故?でも、朔良くんが言っているシチュエーションが簡単に想像出来て笑ってしまう。


「玲衣、行こう」


静かな公園。ベンチに座り、空を見上げた。


「朔良くんの声…………惹き込まれるね」


そう呟けば、玲衣は笑っていた。


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